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2010年09月23日

第495話「終わる日本の怪獣文化」の巻

昨日は怪獣フィギュアの途中監修に行ってきた。

そこで担当のTさんと延々と怪獣談義を交わし、
出た結論は「着ぐるみ怪獣はもう終わり」。
子供たちの特撮怪獣への憧れは失われた。

第495話「終わる日本の怪獣文化」の巻

戦後間もない1954年(昭和29年)に作られた「ゴジラ」は
人間が生み出した恐怖の象徴として描かれていた。

口から放射能火炎を吐き、容赦なく破壊を続ける姿に
大人は恐怖し、子供はその圧倒的な大きな力に憧れを抱いた。

怪獣ブームが到来し、多くのテレビ作品が制作され、
ロボットと並んでおもちゃの定番となる。
怪獣はどこでも目にする生活の一部となった。

第495話「終わる日本の怪獣文化」の巻

70年代に一度ブームは去るが、80年代に入り再燃する。

この頃ガレージキット業界(今で言うフィギュア)の
主流の一つは文句なく怪獣だった。
この頃に僕は怪獣造形の魅力にどっぷり浸かることとなる。

2大巨頭、大阪の海洋堂と京都のボークスの主力商品であり、
ゼネラルプロダクツ(後のガイナックス)も
怪獣特撮関連の商品を展開していた。

第495話「終わる日本の怪獣文化」の巻

90年代中盤に差し掛かる頃、怪獣は徐々に勢いを失っていく。

平成ゴジラシリーズの観客動員数はどんどん下降して行く。
円谷プロは「ウルトラマンティガ」筆頭に平成3部作を制作。
視聴率、玩具販売も好成績を収めるが、後に続かなかった。

この頃から特撮ものにCGが使われるようになり、
映像もデジタルでクリアになる。
それにより、昭和の着ぐるみ怪獣とは違う妙に現実的な
作り物っぽさが露になる結果となったと思われる。

同時期、ゲーム業界に次世代機が相次いで登場。
NINTENDO64、プレステ、サターン…。
子供から大人まで新しいゲームの世界に夢中になった。

世間は着ぐるみ特撮作品に対して急速に冷めていく。

第495話「終わる日本の怪獣文化」の巻

2000年代に入り、いよいよゴジラシリーズも低迷。
2004年の「ゴジラ FINAL WARS」を最後に制作は打ち切られる。

ウルトラシリーズは「コスモス」「ネクサス」「マックス」と
苦戦を強いられつつも「メビウス」で健闘するが、
少子化問題の影響もあり、現在長期シリーズは制作されていない。

これ以降、事実上テレビで怪獣の姿を観ることは無くなった。

第495話「終わる日本の怪獣文化」の巻

先日開田祐治先生と話していて驚いた話がある。

先生がどこか地方のイベントに参加され(自身の作品展だったかな)、
そこで子供対象の「怪獣デザインコンテスト」があったそうで。

揃った作品のほとんどが「怪獣」ではなく「ドラゴン」。

しかもドラゴンの絵の隅にメーターのようなものがあり、
「HP」と書かれていたそうだ。まさにデジタル世代。

これはつまり、子供のたちの海馬の中に
着ぐるみの怪獣が入っていないということだ。
メディアから学習されていないのだから当然のことではある。

第495話「終わる日本の怪獣文化」の巻

モンスターハンター人気や度々訪れる恐竜ブームから、
大人から子供まで「強大な破壊力を持った大きな存在」への
憧れは窺い知れる。ただそれはもはや「怪獣」ではないのだ。

特撮怪獣のいる世界は現実離れしていて馬鹿馬鹿しい。
口から火を吐き、目から怪光線を出す。
今の子供たちは言うだろう。「そんなの生物としてありえない」

US版「GODZILLA」を監督したローランド・エメリッヒは
当然のことながらゴジラの大ファンであるのだが、
先の「ありえない」を「いや、俺の世界では普通だから」と
全力で言い切る愛すべき大馬鹿野郎なのだ。

第495話「終わる日本の怪獣文化」の巻

最新作の「2012」を是非観て欲しい。
巨額の予算を投じ、子供の如き発想で豪快に破壊を楽しんでる。
エメリッヒの作る作品はまさに馬鹿馬鹿しい怪獣映画だ。

第495話「終わる日本の怪獣文化」の巻

ドリームワークスの「ヒックとドラゴン」も良質の怪獣映画だ。
相容れない筈の怪獣と人間が心を通わせ、力を合わせて
「存在してるだけで大きな災害」なる「怪獣」退治をする。

僕たちの観たい怪獣映画がそこにはあった。
まあドラゴンなんだけども。

日本で生まれた日本らしい怪獣映画は、
いまや海外で元気に牙を剥き、羽を伸ばしている。やれやれだ。

第495話「終わる日本の怪獣文化」の巻

現在造形中の怪獣はドマイナーなヤツだ。

こいつが暴れてた頃、僕は幼稚園にも上がってなかった。
しかしテレビマガジンなどでその存在はよく知っていた。

映像を観ると着ぐるみはヨレヨレであちこちパカパカしてて
人が演じてるのが丸出しだが、これが怪獣なのだ。
大量の資料と睨めっこしながらヤツと真正面から向き合うと、
実に愛らしくて格好いい。大好きになった。

商品化されたところで大して売れもしないだろう。
きっと子供たちだって見向きもしない。
それでもたっぷりと愛情を注いで改めて命を与えてやろう。


かつて日本に怪獣という文化が確かに存在していた
微々たる証となって残せたら、それだけで感慨無量だ。



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Posted by うらまっく at 09:22│Comments(3)どぅーちゅいむにー
この記事へのコメント
はじめまして。「ゴジラ」でブログ検索をしたらここを発見しました。うらまっくさんのブログがあるなんて初めて知りました。
ゴジラですが、ハリウッドがまた2012年に実写化します。不評だったエメリッヒの続編ではなく、ワーナーブラザースが3D映画としてもう一度仕切り直すリメイクです。

プロデューサーはコミコンでのインタビューでゴジラのオリジナルを尊重し、エメリッヒの巨大イグアナと米軍の戦いではなく、ゴジラと怪獣が対決するVSシリーズになると言っています。リメイクはワーナーの大ヒット作「ダークナイト」のようなシリアスな感じにしたいという話もしているので、米軍の核実験で恐竜が突然変異したという設定も生かされるのかもしれません。
そして前回がアメリカンすぎて不評だった反省から日本から「ゴジラ対へドラ」の坂野義光監督(か~えせ♪)と奥平謙二プロデューサーが総製作指揮として参加しています。

URLに貼ったのはワーナーがアメリカ版コミケ『コミコン』で特別に販売した限定ゴジラTシャツ画像です。まだ企画は初期段階なのでTシャツの画像通りになるかどうかはわからないそうですが。

YOU-TUBEにはワーナーが発注したらしき新ゴジラの造形の動画が貼られています。「godzilla 2012」で検索をすると画像がでてきますよ。(ソースのアドレスを貼ったら投稿を許否されたのでお知らせしておきます。)

今は各クリエーターにいろんなゴジラのデザインをださせて、それを叩き台にしている段階なんでしょうね。
Posted by 通りすが郎 at 2010年09月29日 23:14
書き込みありがとうございます!

アメリカでの3Dリメイクの噂は聞いてましたが、
具体的な動きやラフデザインを目にするのは初めてでした。
日本の旧ゴジラスタッフも参加されるそうで、
ちょっとこれは期待出来そうな予感がしますね。

でもフルCGだったらつまらんなあ。
個人的に怪獣は「着ぐるみの形をとった生物」と捉えてます。
あまりリアルな生物生物したゴジラでないことを祈ります。

ともあれ、このご時世に怪獣映画が作られるのは何より。
期待して待つことにします!
Posted by うらまっくうらまっく at 2010年09月30日 00:55
>でもフルCGだったらつまらんなあ
残念ながらゴジラはCGだそうです。
ただし、ゴジラのスーツアクターの演技をモーションキャプチャしてトレースする方法を採用する可能性もあるみたいですが。
新ゴジラを作るワーナーとレジェンダリー・ピクチャーズは怪獣総進撃なリメイク「タイタンの戦い」を作っているので、CGで怪獣を動かす技術はあるかと思います。関係ない話ですがリメイク「タイタンの戦い」は監督のルイ・レテリエが「聖闘士☆聖矢」のファンなのでゼウスがクロスを装着していてハリー・ハウゼンのオリジナルからかけ離れたような話になっていましたよね。
Posted by 通りすが郎 at 2010年09月30日 22:33
 
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