オキマン。

親子で沖縄空手道場の門戸を叩いた。

理由は当然、親子空手漫才を普及させるために決まってる。
ゆくし。小２（当時）の息子は興味、俺は体力作り。

外人さんもたくさんでドキドキするじゃあねえか。

フフ…こう見えても俺は小中学校で体操選手だった男だ。
バランス、瞬発力、手足の先々まで神経を行き届かせることには
ちょいと自信があるんだよねぇ。まあ見てなって。

どっこい蓋を開けてみると…最初の基礎練習についていけねえ。
は、吐きそうだぜ畜生。おまけに型が覚えられねえときてる。
なんなんだこの道場は!?…いや、20年のブランクってやつか…。

一方、頭の柔らかい息子はメキメキと上達していく。


そんなある日、師範が俺に言った。
「増田、組み手やってみろ」

なんだとう!?俺はまだ基礎もろくにマスターしてないのにかい？
それは素質がありそうってことなんだな？そう理解していいんだな？
相手は熟練、黒帯のおっさんだ。なんだその安定感のある構えは。
ヘヘ…怖くなんかないさ。お化けなんてウソさ。

とーう！とヘナチョコパンチを繰り出すもパシリと弾かれる。
むむう、舐めんなよ！…と涙目で必殺本気パンチを繰り出した！

ベキリ

なんすか今の音。あ、あれ？ちょっと待って。
え？あれれ？…ゆ、指が向いちゃいけない方に向いてるんですけどっ!!

うわ～ん！脱臼しちゃったYO！
とりあえず利き手の左手じゃなくてよかったけどコワイヨー!!

「どれ、見せてみろ」…と師範、引っ張って正しい位置に骨を戻す。
「これくらいよくある。テーピング撒いて組み手続けろ」
「び…病院行かなくて平気っすか？」「なんくるない！」


そういうものか…と放っておくも腫れが引かない。
１ヶ月ほど経ったある日、飲み会の席にて師範。
「お前、ちゃんと病院行ったのか？指曲がるぞ」

行かなくて平気って言ったじゃないすかああぁぁぁ！
あわてて病院へ。靭帯が切れていたらしく、違和感がなくなるまで
数ヶ月後を要し、日常生活に問題はないものの指が少し曲がってしまった。


恐るべし、琉球唐手、恐るべし、てーげー主義。
黒帯までの道は遠い。