第360話「自転車」の巻
引越しに際し、先日1台の自転車を処分した。
それは元嫁の元愛人が
我が家の境遇に同情し、息子にくれたもの。
自分の子供が昔乗っていたのを修理したもの。
ニコニコしながら届けに来た日、
何も知らない僕は頭を下げて受け取った。
素直に「いい人だな」と思っていた。
やがてその男は、元嫁に大きな傷と
多額の借金だけ残してあっさり逃げる。
そして我が家は崩壊した。
自転車はずっと放置してたのだが、
移動させるためにハンドルを握った瞬間、
嫌な感情が再び一気に蘇った。
僕の人生に於いて、
混じることのないタイプの人種だったはず。
最初に声を掛けたのはその男。
それを受け取ったのは元嫁。
大義名分を掲げて許していたのが僕。
みんな悪い。被害者は子供たち。
捨てられた自転車にも罪はない。
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