第280話「秋の夜長に死を学ぶ」の巻
娘が学校からコオロギをもらってきた。
雄2匹に雌1匹。
娘は名前もつけて、餌のキュウリも自分で
買ってきて可愛がっていた。
キュウリはちょびっとだけ与えて
残りは自らボリボリ食ってたが。
深夜ひとりで机に向かう間も鳴き続ける。
虫の声ひとつで空気が違う。
湿った草の匂いが漂ってきそうな感じ。
その翌日、ふと気が付くと
鳴き続けていたコオロギが静かになっていた。
見てみると、1匹がもう1匹をムシャムシャ食ってる。
ほーらきた。仲間の死骸も食う雑食種。こええ。
とても可愛がっていた娘にその旨伝えると、
死んでるコオロギが怖いと言う。
死骸を籠から出すと、彼女は平気で
生きてるコオロギを手で掴んで巣の掃除をしている。
これが生き物の本能だね。死は怖いものなのだ。
死って不思議だな、と思う。
それが虫でも人でも、魂というか精神が抜けて、
生命活動が停止した瞬間につくりものみたいに見える。
以前嫁の手の中でハムスターが死んでいくところを
見たが、スーッと命が消えていくのを感じた。
ウルトラマンが怪獣を倒した後に目の電球が消えてくあの感じ。
そこに残ってるのはハムスターの形をした塊。
死の瞬間を目の当たりにすると、やっぱり魂みたいな
ものって確かにあって、体はただの器なんじゃないかと思うよ。
ところで死んだコオロギはどうも雌だったらしい。
雄2匹で雌を巡って散々争って、
挙句に雌を殺してしまい、その亡骸を食う。
人間に置き換えたらすっげえ怖い。
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