どうも。戻ってきたよ。
内地の冬は寒いね。
あの寒さの中で30年以上暮らしてたのか。
まあ色々あった1年振りの帰郷だったよ。
予定ではスマートに原稿を終わらせて旅立つはずが叶わず、
ごっそり原稿やらトーンやらペンやら抱えて出発。
まずは嫁の実家に行くスケジュールを大幅変更。
俺のみ空港から編集部に直行、そのまま缶詰めだ。
おもちゃの缶詰めだ。金なら1枚、銀なら5枚ってなもんだ。
不眠不休の修羅場のまま飛行機に乗って、そっからさらに
編集部の一角をお借りして、7時間描き続けて仕上げたさ。
みんなも旅行は計画的にな!ハバーナイストラベル!
お義父さん、お義母さん、すみませんでした。
明けて翌日は別の出版社の新年懇親パーティー。
普段仕事場に篭りきりの漫画家さんたちが、
家族やアシスタントさん、友人たちを連れて、華やかに
着飾って集う。…そしてここぞとばかりに栄養補給をする場。
俺は普段お世話になってる東京のアシさんたちや
担当さん、仲良くしてもらってる作家さんたちとは
この日くらいしか会う機会がないので、大事な日なのだ。
でもその前に入れるもん入れとかないと。
子供たちにも「いいから、まず食え!」と促す。
蟹しゃぶとフカヒレ麺とローストビーフが旨かった。
1次会は大広間で立食、2次会は雑誌別に分かれる。
売り出し中のグラビアアイドルの娘たちもいっぱいだ。
そして一番面白いのは居酒屋に移動しての3次会だったりする。
本音漫画トークはここから。くだけた雰囲気の中、同業者さんや
編集さんたちと酒を交わし、漫画について熱く語る。
俺なんかもう、先の連載打ち切りと、何を描けばいいのか
わからない絶望的な紙漫画の未来に完全に腐ってたね。
ぐでんぐでん。下戸だから一滴も飲んでないけどな。
一夜明けて最後の打ち合わせ。
ホテル最上階、東京の街を一望できるカフェ。
単行本最終巻を飾るカバーの方向は定まった。
精一杯いいイラストを描こうと思うよ。有終の美を飾らんとね。
すっかり沖縄っ子になった子供たちが、ガラスの縁に這いつくばって
撮った東京の図。どうも今は勝ち誇った気持ちになれないが。
漫画に限らずあらゆるメディアは、それを嗜好としない人々の
心を引っ張ってこそヒットを勝ち取るもの。
しかしながら、得てしてその類の作品は、送り手側の本音では
ひどくつまらなかったりするのが常。これはもう仕方がない事実。
割り切って勝つか、こだわって耐えるか。悩みは尽きない。
ほんの僅かだが、我が道を貫き勝つ者もいる。
そこに方法論は存在しない。誰にもわからない。いやマジで。
そして漫画家たちは、今も日本中で死ぬ気で原稿を埋めている。
俺もがんばる。悩むのは描きながらでもできる。
もう次の締め切りはそこまで迫ってるしね。うひょう!